降着円盤の話を聞いてきた

第71回 地球情報館公開セミナーLink なるものを聴講して来ました。新杉田はちょっと遠いけど、まぁ幕張Link の半分の時間でいけるわけでありw 毎月やっているそうで、今回のネタは降着円盤。

ブラックホールは回りにある全てのものをその重力で引き込むわけですが、全ての物が一直線にブラックホールに向かっていくわけではなく、周りをグルグル周回してなかなかブラックホールに近づかないの場合があります。なぜすぐに落ちないかというのは、月が地球に落ちてこなかったり、水星が太陽に落ちていかないのと同じ。近づくと回るスピードが上がってしまうので、遠心力が大きくなって遠ざかってしまう。近づくためには何らかの方法で回転運動にブレーキをかける(=運動エネルギーを奪う)必要があります。

降着円盤とは、こうしてブラックホールの周りをぐるぐる回り続ける原子・分子がたくさんあって、高圧・高速なガスの円盤を作っている状態。土星の輪みたいな感じですが、輪を作っているのは岩石や氷ではなく気体で、輪の幅もずっと大きい。ブラックホールに落ちないくらいの高速で回ってます。

で、このガスは延々と回っているわけではなく、光を発しています。その光のエネルギーの源がガスの運動エネルギーであり、ガスは光ることによって減速され、ブラックホールにゆっくり落ちていくことになります。

ここまでは私も予備知識として持っていましたが、講義で聞いたのはなぜ光るのか良くわかっていなかったということ。うん?高圧のガスなんだから、分子同士が互いにぶつかってそのときに光るんじゃ、と今まで思っていたのですが、気体を圧縮した直後は加熱して光を発するものの、冷えれば光らなくなり、高圧だから光るというわけじゃない。かといって、核融合が起きるほど高圧にはならない。

AccretionDisk1

過去にあった説のひとつに、円盤内のガスはブラックホールに近いほど速く、遠いほど遅く回るので、その速度差でお互いが擦られて摩擦熱が発生するというもの。しかし気体というのは摩擦が極めて小さく、光を出すだけの摩擦熱は出ないとか。
AccretionDisk2

光る理由も話してもらい以下の通りなのですが、私には結構複雑な内容なので合ってるかどうか。(粒子が磁束に沿ってしか動けないという理由は分かりません T_T)
  1. ガス粒子はプラズマとなっていて、磁束の貫く方向にしか自由に移動できない
  2. このような粒子のひとつに外力(他の粒子がぶつかるとか)すると、その粒子は内側に行き、回転速度(角速度)が増加する
  3. 他の隣接粒子は磁束で繋がれており、内側に入った粒子の角速度にあわせるように引っ張られ角速度を上げ、外側に出る
  4. 隣接粒子が外側に出るエネルギーは内側に入った粒子の運動エネルギーであり、内側に入った粒子は再び外に出るエネルギーを失う
  5. 全体的に見ると、これは最内周の粒子から最外周の粒子へのエネルギーのバケツリレー。
  6. この移動によって磁束が変形、空間に変位電流が流れる
  7. 変位電流は他の粒子によってジュール熱に変換、発光する
図の左右が降着円盤の内側・外側、上下が円盤の上下、手前・奥がガスの回転方向となってます。

理屈は考えられても実際にそうかというのはコンピュータで膨大な計算するしか無いという内容。そこで地球シミュレータLink で研究しているのだとか。シミュレーションの結果は、最初こそ磁束は図のように波打つ程度ですが、それがさらに別の粒子の移動を生み出し、最終的には縦横無尽に磁束が激しく変化するというもの(さながら、養殖ウナギに餌をやるときの風景w)。このような激しい磁束の変化が生む変位電流が、発光の元になるという話でした。

膨大な計算のためにコンピュータを使う方法としては、BOINCLink などの分散コンピューティングがありますが、なんでも計算途中のデータでも平気で1TB行くらしく、PCではまだ無理な話だなぁと。

— posted by mu at 09:14 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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